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インタビュー

青木涼子 能と現代音楽、CDとコンサート(4)



──フィールドが能と現代音楽ということで、こうした活動をつづけていくなか、将来的に考えていることは。そう遠くないうちに、多分全然違うオファーがくるかもしれない。別のフィールドからも。謡わないで、動くだけ、とか……

「マドリッドでやったヴォルフガング・リームのオペラ《メキシコの征服》がそうでした。完全に身体表現だけの役。このオペラは、アントナン・アルトーによる戯曲が基になっていて、メキシコの最後の王モンテズマとスペインの将軍のコルテスとの出会いが描かれているんです。私の役のマリンチェは、実際に存在していた、二人の通訳をやっていたメキシコ人女性で、コルテスの愛人であったといわれています。オペラでのマリンチェの役割は、黙役で、身体表現で通訳をする役なんです。しかし、通訳が通じなくて、誤解が生じ、悲劇を生んでしまう役です。アルトーが能に影響を受けていたこともあり、日本の能の役者、そして女性であることから今回起用されることになったわけですが、そこまで意図がすごくはっきりしているものだと、やるのはとても面白かったです。ただ新しい曲に合わせて舞ってください、というのはちょっと。。そういうオファーが多すぎたから敢えて自分で、作曲家の人に声のための曲を書いてください、ってことを言ったわけですが、そうじゃなくて迂闊に頼むと、舞のための曲が出てくるんですよ」

──何でもいいから動いて、と。

「そうです。ダンスのために書く曲だと思っている人がたまにいるので、そうじゃないことにしてください、って敢えて言っていました。今後は、私のために作られた舞台作品もありますし、そのときはもちろん演出家と一緒に作っていって、謡うし演技もしたいと思っています」

──今後のご予定は?

「7月にハンガリーで「バルトーク・フェスティバル」があり、エトヴェシュの70歳記念コンサートで《Harakiri》を演じます。今年の後半は、マドリッドとビルバオで、スペインのアンサンブルとの共演で、室内楽のコンサートとリサイタルをやるのですが、そこで《Harakiri》も演奏する予定です」



カテゴリ : Web Exclusive

掲載: 2014年06月06日 10:00

ソース: intoxicate vol.109(2014年4月20日発行号)

text : 小沼純一(音楽・文芸評論家/早稲田大学教授)