宮本浩次、55歳の誕生日にバースデイ・ライヴ「宮本浩次縦横無尽」を敢行。本日6月16日リリースのシングル表題曲“sha・la・la・la”も披露
ソロ活動中の宮本浩次が55歳の誕生日である6月12日に、東京ガーデンシアターでバースデー・コンサート「宮本浩次縦横無尽」を敢行。2020年3月のソロ1stアルバム『宮本、独歩。』発売後に予定されていた初ソロ・ツアーが、感染防止で全公演中止となったため、バンド・セットでのソロ・ワンマン・ライヴは2年以上におよぶソロ活動で初の開催となった。アンコールを含め全25曲。時に床に頭をつけ渾身の力を振り絞り、ステージの端から端まで疾走し観客と心を通わせながら、全身全霊で歌った2時間15分だった。
第1部は「宮本浩次ショー」の趣。生命の誕生を思わせる映像から暗転し、真っ暗闇の中を下手側からランタンを手に登場。待ちに待ったこの瞬間に、観客から大きな拍手が沸き起こる。始まったのは“夜明けのうた”。暗闇を自ら照らすように小さな灯りを提げて歌う。やがて背景映像が朝焼けの赤みを帯び、徐々に明るくなるにつれステージの全貌も明らかになっていく。古代建築のような4本の柱と堂々たる4人のミュージシャン。宮本はシックな黒のダブル・ジャケットに黒スキニー。映像が効果的に使われた、時勢を映すような美しいオープニングだ。新しい明日を約束する優しく真摯な歌声に、早くも涙する観客も。続いて久保田早紀“異邦人”をカバー。昨年11月にリリースしチャート1位に輝いた大ヒット・カバー・アルバム『ROMANCE』からの選曲だ。小林武史によるドラマチックなアレンジで、ギターは名越由貴夫、ドラムは玉田豊夢、ベースはキタダマキ、キーボードは小林。強者4人の緻密で重厚なサウンドが空間を圧倒する。宮本のカバーは、原曲に深い敬意と愛を注ぎながら、他人事ではなく当事者として歌うことで説得力を持つ。早くも床に這いつくばって全力を振り絞る。アウトロの激しいシャウトは宮本の真骨頂。会場は息をのみ、一気に心をつかまれる冒頭2曲だった。
ソロ・オリジナル曲から、『ROMANCE』のカバー曲、椎名林檎、東京スカパラダイスオーケストラとのコラボレーション曲、“今宵の月のように”などエレファントカシマシの曲まで、MCする暇はないとばかりに次々と畳み掛けていく。中島みゆき“化粧”のカバーでは恋を失った主人公が憑依し、胸を締めつけられるような切ない歌声を聴かせる。横山健との共同プロデュース曲“Do you remember?”で力尽きるほどパンクな絶叫をしたかと思えば、続く“冬の花”で一転、人生の最終章の機微をしなやかに情感たっぷりに歌う。“解き放て、我らが新時代”でせり上がるリフターに乗ったり、“獣ゆく細道”で白いスーツに着替えたりと、第1部はソロならではの見せ場で楽しませ、第2部はロック・バンドの音を存分に鳴らす。楽曲や演出のこのめくるめく多彩さに、掛け声と合唱を禁じられた観客は精一杯の拍手、振り上げる腕、リズムに合わせ揺らす身体で応える。宮本は何度も「届いてるぜ!」、「気合が伝わってくるぜ!」、「いい顔してるぜ!」と叫ぶ。歓声はなくとも、双方が心の交感を確信できただろう。
全編を通して、バンドの音の厚みは圧巻だった。手練れ4人のスーパープレイにハンドマイクひとつで食らいつく。序盤の“きみに会いたい-Dance with you-”から激しいピアノとの対決、バンドとの真剣勝負の様相を呈していた。長年、日本ロック界の至宝と称されるトップ・ヴォーカリストと、音楽家として信頼し合ったトップ・ミュージシャンたちが、プロの誇りをかけて奏でる音の集合。これこそ宮本が50歳を過ぎ、歌手として挑戦したかったことなのだろう。ミュージシャンひとりひとりのソロ・パートが見せ場となる“あなたのやさしさをオレは何に例えよう”をセットリストの最終局面に組み込んだのは、彼らへの敬意の表明だったように思えた。
MCで世の中の現状に一切触れないのも宮本らしかった。怒りと前進の歌“ガストロンジャー”や、“悲しみの果て”や、“P.S. I love you”で「立ち上がれ」の歌詞を歌わず叫ぶことにすべてが込められていると受け取った。歌で伝えるのだ。いよいよ終盤、「みんなの前で歌えて俺たち幸せです。届いたと思う」、「素敵な日がやってきますように!」と叫び“ハレルヤ”へ。直筆の歌詞が映し出され、観客を、そして自分を励ますように最後の「幸あれ」を繰り返す。大きく手を振り、本編ラストは“sha・la・la・la”。6月16日にシングル・リリースされる最新曲だが、まるで長年歌い込んだかのような浸透力で、自身の現在地を皆に語り掛けていく。いかした大人になりたいと願った昔の自分。でも白髪まじりになった今も、気づけば心の中で「いかした大人になりたい」と叫び続けている。「お前は今どのあたりなのさ?」の歌詞に、「教えてくれ」とつけ足した。
24曲を演奏し終了後、アンコールとして小林と再登場。ふたりで作ったばかりという新曲を、歌詞を記した紙を手に持ち披露した。本編で触れ忘れていた「バースデー」を思い出し、会場に向かって「誕生日おめでとう」と言い笑う。同じ6月生まれの小林とタッグを組んだ2002年のエレファントカシマシのアルバムから約20年後。“冬の花”で再会するまでに何度も小林の夢を見たと打ち明ける宮本。ピアノの演奏で静かに始まったバラードは、自分の覚悟を確かめるような言葉が散りばめられていた。最後までどんどん伸びていく誠実な歌声で会場を感嘆させ、退場時の言葉は「また会おう!」、「音楽って素晴らしい!」だった。
1曲でも多く届けようと詰め込んだセットリスト、まさに縦横無尽の多彩さと全身全霊の歌唱、鉄壁のバンド・サウンドとの勝負、そして何度もメンバー紹介する初々しさ。55歳の誕生日に立ったこのスタート地点から、ソロ宮本はどう羽ばたいていくのか。人生は前に進むしかない。本編ラストで小林と握手した際のあの満面の笑顔が、これから歩む道を照らすだろう。一所懸命に生きる人の存在は、泣けるほどに光り輝いて明るい。
▼リリース情報
宮本浩次
シングル
『sha・la・la・la』
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カテゴリ : タワーレコード オンライン ニュース
掲載: 2021年06月16日 12:45