Raphael Saadiq
トニ・トニ・トニやルーシー・パールで、常にR&Bの〈現在〉を作り続けてきたラファエル・サディーク。そして今回、スポットライトを浴びるのは彼ひとり。渾身の『Instant Vintage』は〈未来〉をもたぐり寄せる傑作だ!
ドーン・ロビンソンもアリ・シャヒード・ムハマドも抜け、「正式メンバーではなく友情出演してもらった」というジョイと2人で回ったルーシー・パールのツアーを終え、1か月の休養。その後に自身のスタジオ、プーキー・ラボで毎日午後1時から翌朝4時という日程(決めているのが凄い!)にて6か月かけて制作した、ラファエル・サディークの初ソロ・アルバム『Instant Vintage』。先行シングル“Be Here”の、セクシーなディアンジェロとともにアパートのポーチでギターで弾き語りするプロモ・クリップも、シンプルでありながら、直球的にメッセージを伝える素晴らしい出来になっているが、これがなんと……。
「僕の初監督作品なんだ。あの映像のイメージが頭にまずあって、あの曲ができた。アパートの前でジョン・リー・フッカーのように座ってギターで弾き語りし、女の子が2秒おきに現れる。でもそんなことは僕の目には入ってない、だって僕にとっていちばん大切なのは自分の愛する女性で、僕はその女性を待ってるんだ、外でこうして……ってね。今回参加してくれたディアンジェロはピアニストでシンガー、僕はベースとギター。互いに刺激し合ってるんだ。いまじゃ曲を作る時は僕がピアノで作って、彼がギターで作るようになっちゃったくらい(笑)。でも彼といっしょに仕事すると、魔法がかかるんだよね。僕たちは兄弟であり、親友だ」。
「将来はショート・フィルムの監督をしたい」とも語るラファエル。彼はこれまでもディアンジェロのキャリアにとって重要な役割を担ってきたが、そのディアンジェロあたりからメインストリーム音楽へと変貌していった現形の〈ネオ・ソウル〉の先駆者的存在こそラファエルであることはご存知のとおり。
「〈ネオ・ソウル〉は真のソウル・ミュージックではない。僕はそう思ってるよ。単純に業界用語さ。呼び方はアーティストがそれぞれ決めるべきで、ここでハッキリしておこう、僕のサウンドは〈ゴスペルデリック〉だからね。僕のルーツはゴスペルだし、子供のころからファンカデリックとかジミ・ヘンドリックスのサイケデリックとかも聴いてたし、それももともとはゴスペルだろ? それでゴスペルデリック、つまりファンキーでいて真実を語り、リラックスして聴けるもの。アルバムを聴けば自分が素直になれるような感覚かな」。
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カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2002年05月30日 14:00
更新: 2003年03月06日 19:34
ソース: 『bounce』 232号(2002/5/25)
文/Kana Muramatsu