R&Bシーンの流れを牽引し続けるラファエルの歩み
トニ・トニ・トニ脱退後もマルチな音楽家として活躍するラファエル・サディーク。彼がわれわれの前に姿を現したのは88年、トニ・トニ・トニのデビュー作『Who?』でだ。フォスター&マッケルロイ制作による同作は、当時全盛だったニュー・ジャック・スウィングの影も色濃く、正直、グループの個性(ましてやラファエルの個性など……)が芽吹くまでには至らなかった。
が、90年の『The Revival』をほぼ自力で仕上げると、以後、彼らはクリエイターとしての才能を発揮し始める。それが93年の傑作『Sons Of Soul』を生み出す原動力となるわけだが、同作のヒットを受けてメンバーが課外活動に乗り出すと、94年、ラファエルは“Ask Of You”でソロ・デビュー。翌年にはディアンジェロのデビュー作に関与してプロデューサーとしての地位を築き上げ、それはグループの4作目『House Of Music』(96年)に好結果をもたらすと同時にラファエルの独立心をも増幅させた。
と、その後はトータルやザ・ルーツらの東海岸ヒップホップ(・ソウル)作品にオーガニックな味わいを施し、その流れでベイビーフェイスやローネイ、ソロ、ビージーズやトシ・クボタなど人種やジャンルを越えて活動。また、みずからのレーベル、プーキーからウィリー・マックスをデビューさせるなど、まさに八面六臂の活躍ぶり。そのなかでATCQの面々とも交流を築いていた彼は、99年に“Get Involved”でQ・ティップと共作&共演し、ウマーにも加入。こうした合間を縫ってスヌープ・ドッグやDJクイックなどの西海岸ヒップホップ作品に極上のメロウネスを注入してもいた。
ルーシー・パールは、まさにこうした活動の総括だったわけだが、ここでのバトルキャットとの共作関係を翌年のケニー・ラティモア仕事に発展させるなど、彼の貪欲さには本当に目を見張る。ディアンジェロの2作目以降は、ビラル、メイシー・グレイ、アンジー・ストーン、そして先日のジョイと、ネオ・ソウルの先駆者ぶりを発揮し、マーカス・ミラーらのジャズ作品にまで関与……。こんなにもさまざまなスタイルに適応しながら、それでもしっかりと自分の音を持っているラファエルって、やっぱり天才だ!
図中の作品を紹介。上段左から、アン・ヴォーグ『Born To Sing』(Atlantic)、ピュア・ソウル『Pure Soul』(Interscope)、ディアンジェロ『Brown Sugar』(EMI)、トータル『Total』(Bad Boy/Arista)、トライブ・コールド・クエスト“Stressed Out”(Jive)、ルーツ『Illadelph Halflife』(MCA)、スヌープ・ドッグ『No Limit Top Dogg』(No Limit/Priority)、ディアンジェロ『Voodoo』(Cheeba/Virgin)、ダークサイド『Nothing To Lose』(Tic Tic Bang!)、ビラル『1st Born Second』(Interscope)、ジョイ『Star Kitty\\\\\\\\\\\\\\\'s Revenge』(Universal)。下段左から、トニ・トニ・トニの1作目『Who?』、2作目『The Revival』、3作目『Sons Of Soul』(全てMercury)、“Ask Of You”収録のサントラ『Higher Learning』(Columbia)、トニ・トニ・トニの4作目『House Of Music』(Mercury)、ウィリー・マックス『Bonafied』(Pookie/Motown)、ラファエル・サディーク&Q・ティップ“Get Involved”(Hollywood)、ルーシー・パール『Lucy Pearl』(Pookie/Virgin)
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