インタビュー

Aerosmith(2)

2004年のブルース・ロック・アルバム

〈エアロスミスがブルース・アルバムを制作する〉という最初の公式発表があったのは、2002年夏のこと。実際のスタジオワークが開始されたのは2003年4月だったという。で、それからまだ間もない頃、ビルボード誌の取材に応えてジョーは次のように語っている。

「俺たちが影響を受けてきたものに、自分たちなりの味付けをしてるんだ。俺たちはブルース信者のためにアルバムを作ってるわけじゃないし、ブルースってものについて大衆を教育しようって考えてるわけでもない。俺たちがやろうとしてるのは、俺たちがブルースから感じたもの……つまりブルースを聴いて、うなじの毛が逆立ったようなあの感覚を、自分たちなりの解釈で体現することなんだ」。

 さらに彼は、こうしたブルース色の濃いアルバムを作るという発想が、実は『Just Push Play』完成当時からアタマの中にあったことを認めている。

「あのアルバムを作り終えたとき、確かにいい曲もあるんだけどファースト・アルバム『Aerosmith』とは確実に違う音だな、と思ったんだ。で、あんな音はもう出せないけど、あれを録ったときのアティテュードなら絶対に取り戻せると思った。このアルバムではすべてを〈ストレート〉に表現したかったんだ」。

  誤解してほしくないのだが、ジョーのこの発言は『Just Push Play』に対する否定的感情を訴えるものではない。常に新しい刺激やアイデアを採り入れながら、しかも自分たちなりの王道を貫き続けてきたエアロスミスが、いまの自分たちにとって刺激的な冒険/挑戦のカタチとして求めたのが、ブルース・アルバム制作だったということなのである。すでにデビューから31年を経ている彼らだが、いま、あえて当時のモチベーションを確認することで、過去のいかなる時代にも体現不可能だったカタチをしたブルース・ロックを成立させることができるんじゃないか……そんなスリリングな期待感に突き動かされた結果のブルース選択だったのだろうと僕は解釈している。

 そしていま、こうして届けられたニュー・アルバム『Honkin' On Bobo』は、事実、ブルース・アルバムである。が、それ以上に〈エアロスミスのアルバム〉である。なぜそうなり得たのか。それは本作でのエアロスミスが〈ブルースに挑戦した〉のではなく、〈すでに自分たちのなかにある、自分たちなりのブルースを吐き出している〉からに他ならない。最後にもうひとつ、ジョー・ペリーの発言を。

「最初に決めたんだ。〈ブルースとはなにか〉を定義したり、〈ブルース、かくあるべし〉みたいな考えに囚われないでいこうってね」。

 そう、これが2004年のエアロスミスであり、現代もっともクールなブルース・ロッ
クのカタチなのである。

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掲載: 2004年04月08日 12:00

更新: 2004年04月28日 20:05

ソース: 『bounce』 252号(2004/3/25)

文/増田 勇一