インタビュー

Jazztronik(2)

日本語をどう乗せるか

「人が思う僕のイメージと、実際DJをやる時に僕がかけるものを比べるとギャップがありすぎて、びっくりしちゃう人がいるんですよ。〈あ、オシャレな4つ打ちがかからない〉みたいな。Jazztronikはジャズ・バンドでもないし、ブラジリアン・ハウスだけやっているユニットでもない。そうしたイメージを払拭するために、ちゃんとJazztronik=野崎良太というのはこういう人なんだっていう認識を持ってもらいたかった」。

 まず、8月にリリースされた『CANNIBAL ROCK』で最初に目を惹いたのは、今井美樹をフィーチャーした“SEARCHING FOR LOVE”、そしてゴスペラーズの黒沢薫を迎えた“流星”といった歌モノの楽曲。昨年の『七色』でも試みられてたJ-Popメインストリームへのジャズトロ流の果敢な取り組みが窺える。

「美樹さんも黒沢さんもJ-Popのトップに君臨している人じゃないですか。歌に対する取り組み方とか、本当にびっくりしてしまって。僕が美樹さんとやるっていうと、ゆったりしたボサノヴァかなと思われるかもしれないんですけれど、まず美樹さんのアルバムにも入っていないような曲になって。黒沢さんについても、かなりゴスペラーズと違う感じなんですよね。格好良く聴かせるトラックに日本語をどういうふうに乗せるかっていうのは実は凄く難しくて。このトラックで英語のラップが乗っているのは普通だけれど、少しでも歌ってみたいと思う人がいたら歌えるような曲にするっていうのは、僕が日本語の曲を作るうえでの大前提だから」。

 ヴォーカリストの新たな面を引き出すという部分でも、今作のコラボレートは豊かな実りを生んでいる。またボーダレスなラテン・チューンである表題曲の斬新な構成など、お茶の間から車の中までシチュエーションを選ばず、懐の深い聴き心地の良さにこだわりながら、Jazztronikの新機軸がめくるめくような速度で立ち現れてくる。

「ただ、ラテンだけじゃつまらなくなってしまうので、そのなかにフローラ・プリムが歌う“DENTRO DE MIM”があり、 ファンキーなブロークン・ビーツの“BEEPING”があり、という躍動感のある流れを作りたかった」。

『CANNIBAL ROCK』はポップでありながら、ベースはラテン・ミュージックのパッショネイトなカラーで彩られている。ライヴのステージでは大所帯のバンドを従えて見事なコンダクトを見せる彼のラフな姿が浮かんできたり、クラウドを熱狂させるDJ的側面の強い作品だといえるだろう。フロアの感覚を肌で知る者だからこそ提供できる快感原則が手に取るように感じられる作品だ。
▼『CANNIBAL ROCK』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

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掲載: 2005年10月13日 16:00

更新: 2005年10月27日 18:11

ソース: 『bounce』 269号(2005/9/25)

文/駒井 憲嗣