インタビュー

SEEDA(4)

ラップはとりあえずやめて

 一応書いておくと、『SEEDA』は一連の出来事によって評価が上下するような作品ではない。MoNDoHやham-Rら6MCと疾風のようなマイクリレーで駆け抜ける“GOD BLESS YOU KID”、軽やかなポリス風のアレンジで緊張感から解き放つような“夢からさめたら”など、BL自身のビートも最高のハイライトを何度も担っている。そして、酔いどれたり、睨みを利かせたり、嘆いたり、自在に声色やフロウを操る主役の格好良さは半端じゃない。

――語り口のヴァリエーションもそうなんですけど、全体のトーンとして、今作は過去最高に人懐っこい感じがしましたね。

 「本気でやりすぎると逆に伝わらない場合もあるっていうのを学んだから(笑)。だから〈全力じゃない〉っていうと語弊がありますけど、今回はむしろ80%ぐらいの余裕でやってる部分もありますね」

――最初は曲単位で色調がかなり違うんだけど、聴き進めるにつれて全体の輪郭が見えてくるような作品だなって。

 「あ~、それはやっぱ〈他力〉です。そこまでは計算してないっすね」

――ゲストもイキのいい人が揃ってますが、〈CONCRETE GREEN〉繋がりで縁ができた人も多いですよね? シリーズはいったん区切りをつけたそうですが。

 「はい。この後はISSO君とガッツリ力を合わせて、良いと思うラッパーのアルバム作りを手助けしていくんです。だから俺はその時点でラップはとりあえずやめて。まあ、趣味だから車運転してる時にラップしたくなるとかは否めないっすよ。ただ、自分が人に〈こういうのおもしろいよ〉って提供する時でも、自分でやろうとしちゃうから」

――ラッパーとしての欲が出て?

 「そうです。あ~、コレ歌いてえとか(笑)」

――それは自分の周囲やシーン全体を盛り上げたいとかいう意識から?

 「いや、自分が聴きたいかどうかだけですね。例えばBES君のラップをこういう音で聴きたいな~とか、リスナー視点で(笑)」

――その意味でも新作は区切りになるわけですね。

 「そうなります。イケイケでがんばってる実力のある奴らが凄くサポートしてくれて、〈SEEDAはラッパーだ〉っていう気にさせてくれた。俺がやりたければこの先も音楽をやっていけるって、みんなが最後に教えてくれたとも思うんですよ」
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掲載: 2009年05月28日 17:00

更新: 2009年05月29日 20:02

ソース: 『bounce』 310号(2009/5/25)

文/出嶌孝次