インタビュー

SEEDA(3)

ムカついてもエンターテイメントにする

――では、中身について伺う前に、制作期間と重なって発表された“TERIYAKI BEEF”とか、その後のVERBALさんのポッドキャスト出演とか、いま振り返ってみてどうですか?

 「まあ、アルバムがあってもなくてもやってましたよ。TERIYAKIの曲を最初に聴いて、〈何だ? この胸の引っかかりは〉って思って、OKI君にも電話して……ムカついたけど、速攻でオイシイね(笑)ってエンターテイメントな考えになりました。正直、思いっきり曲でやり合って盛り上がりたかったですよ」

――フリースタイルもありましたけど。

 「……まあ、ラッパーとして考えればもういいです(笑)。別に彼自身が嫌いとかそういうんじゃないし」

――一連の出来事が具体的に今回の作品に投影された部分はあります?

 「“GET THAT JOB DONE”と“DEAR JAPAN”ですね。“GET THAT JOB DONE”は、“TERIYAKI BEEF”の時に〈メジャー対アングラ〉とかよく言われて、ちょっと待てよ、そこ垣根じゃなくねえ?みたいな。俺もメジャーだぜ、って歌ってます」

――その曲では〈売名行為〉もハスリングだと言い切ってますが。

 「CDを売る仕事なんで、自分を売るのが当然だと思うんです。セルアウトどうこういうのももう古いっすよね」

――まあ、日本のヒップホップ観はそういう古い律儀さがあるというか、ポップ方向に振れた人も〈セルアウトしてない〉ってわざわざ表明したり。おもしろいかどうかで判断されればいいと思うんですけどね。

 「正しいかどうかわかんないですけど、ある意味頑固な人たちの音楽じゃないですか、ヒップホップって。ただ、時代っていうものの流れに対してメッセージが生まれるわけで、頑固でもいいけどその変化に対応しないと、時代のことを歌えないって思うんですよ」
▼『SEEDA』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年05月28日 17:00

更新: 2009年05月29日 20:02

ソース: 『bounce』 310号(2009/5/25)

文/出嶌孝次