インタビュー

MIKA

カラフルでハッピーなポップソングをクリエイトする夢の国の王子様が、みんなに笑顔をデリヴァリー! そう、彼といっしょなら私たちはどこまでも輝けるはず!!

音楽的な思春期を経験したよ


  ポップであることに命を懸けている。ポップ・ミュージックでこの世界を塗り替えるのだという覚悟がある。この男の音楽は聴く者を幸福のどん底(←こんな言葉はないんだが……)に陥れる。

 もしかしたらミーカが触れたものは何だってその瞬間にキラキラ輝き出しちゃうんじゃないか。彼がそんな魔法使いのようにも思えてくるセカンド・アルバムだ。その名も『The Boy Who Knew Too Much』。〈2枚目のジンクス〉なんざ、どこ吹く風。デビュー作『Life In Cartoon Motion』のポップ・レヴェルをこうも軽々と上回ってしまうとは……驚愕!

 「いや、軽々とだなんてとんでもない! ここまでくるのはかなり大変だったね。孤独であり、限りなく孤立した作業だった。ロンドンとLAのスタジオに1年くらいひとりでこもって、毎日ピアノにだけ向き合って、想像の世界に身を置きながら曲を書いた。この1年は自分にとって凄く重要なものだったな。何というか……音楽的な思春期を経験したようにも感じられた。こうしてアルバムを完成させられたことで、僕はこのまま一生音楽をやっていけるという手応えを得ることができたよ」。

 デビュー作が全世界で500万枚のセールスを記録したとあって、実際のところ、レコード会社からのプレッシャーは相当のものだったらしい。もちろん彼自身も前作を超える作品を作らねばという責任をズッシリ感じていた。その突破口となったのが、今年5月に1万枚限定で発表した絵本付きのEP『Songs For Sorrow』だったそうだ。

 「アルバムを作るにあたって商業的なプレッシャーが曲作りに影響してしまうことを恐れていたんだ。それで、限定でしかリリースできないような楽曲集を思いついた。〈シングル向き〉だの〈ラジオ向き〉だのといったことをまったく考えずに、曲作りを純粋に楽しむためのプロジェクトだね。僕は想像の膨らむままに、〈魚になりたくて足を切り落とす女性の物語〉とか〈飼い主に虐待されていることを訴える犬の物語〉を書いた。そういう曲を書いたことで、ためらいや抑圧から解放され、僕はただのソングライターに立ち返ることができた。EPを作ったことで解き放たれ、アルバムのコンセプトが見えたんだよ」。

 そのEPでミーカは、「ナーサリー・ライム(わらべ歌、子守唄)に焦点を当てた」とのこと。

 「デビュー作でもナーサリー・ライムを引用してるんだけどね。子供の頃は、何も考えずにそれらを聴かされたり歌ったりしていた。でも16歳の時にあるナーサリー・ライム集を買って、それらがいかに残虐で陰惨なものを含んでいるかに気付いたんだよ。どれも純真無垢なのに残虐性が混ざっている。幸せと悲しさが混ざっている。そこに衝撃を受けた。それで、EPでは一聴すると優しい曲のようだけど実は残虐だったり悲しかったりするものを書いたんだ。本当は悲しいのに、曲調によって楽しい気分になる……っていう組み合わせがいいなと思ってね。それって、まるで僕の10代の頃のことのようだと思ってしまったわけ。そこから、セカンド・アルバムでは僕の青春時代について書いてみようという発想が生まれたんだ」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年09月16日 18:00

ソース: 『bounce』 314号(2009/9/25)

文/内本 順一