インタビュー

ティンバと同機するダーティー・サウスのヒップホップ・ビート

南部のビートがティンバランドに影響を受けて現在のビートを編み出したという言質は正確ではない。むしろ、最近のティンバに感じる暖かさや下世話さはダーティー・サウス連中から影響を受けた結果ではないか、と思う。ともかく、そんなティンバランドとシンクロしておもしろい音を作り出している存在といえば、(音の構造こそまったく異なるが)まず挙げられるのが、狂った疾走感で泥の中を這い回るアウトキャストだろう。また、メンフィス~ヒューストンの地場音楽を消化して独自の未来感を獲た8ボール&MJGや、ヴァージニア時代に交流のあったネプチューンズもそうだ。一方、マイアミ・ベース流れでバウンス・ビートを創始したルイジアナ勢でも、マスターPの近作やケイン&アベルの作品は豪快さと錆びたニュアンスを豊かに配合し、みごとにティンバらと同機している。〈南部〉の一言では語り尽くせない、多様な音が波及し合っているということだ。

左から、アウトキャスト『Big Boi & Dre Present... Outkast』(Arista/BMGファンハウス)、マスターP『Ghetto Postage』(No Limit/Priority)、ケイン&アベル『Most Wanted』(Most Wanted/MCA)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年05月16日 14:00

更新: 2003年03月06日 20:03

ソース: 『bounce』 228号(2001/12/25)

文/狛犬