ティンバ・ビートの源泉をあらためて考える
ティンバランドがアリーヤの2作目『One In A Million』で俄然注目を浴び始めたころは、われわれもその特異な意匠の引用先にドラムンベースを見ることが多かった。しかし、彼がそもそも取り憑かれていたのはブランニュー・ファンクたる斬新な音像の確立だったわけで、ドラムンベース的な倍速ドラミングなど彼にとってはほんのひとつのパーツに過ぎなかった。その後、作品数を重ねるに従って彼のサウンドからはどんどん贅肉が削がれ、ときにはベースレス、さらにはハイハットレスなプロダクションにまで手をつけて、異端と挑戦と原則、この三方位のバランスを誰よりも巧みにとってみせた。そんな彼が参照した過去の作品となれば、リムショットの忙しい響きで幕を開けるアル・グリーン“I'm Glad You're Mine”や、マーチ風のホーン・セクションの流れるドラマティックス“Fell For You”などが思い浮かぶが、彼がそこにファンクの素を見て、みずからのプロダクションへと援用しているのは間違いがないところだ。つまり、それ自体がファンクなのかどうかではなく、ファンクに調理できる素材なのかどうか、それを見極める感覚に長けているのがティンバのすごいところなのだ。彼が繰り出すどんなサウンドも、いまとなってはどれもファンクの豪勢な烙印が押されているといっても過言ではない。
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