インタビュー

Timbaland & Magoo(2)

 「前に聴いたことのあるような曲は作りたくなかった。 プロデューサーはティムだけど、2人でリリックを書いて、各曲のいろんな決めごとはいっしょに決めたんだ。 クリエイティヴでおもしろくて、すべての曲がそれぞれまったく異なる雰囲気になるようにってね。 その点はラップやヴォーカルの面についても同じさ」。

その言葉を裏付けるかのように、今回はサウンド以上に〈声〉のアレンジメントがものすごい。 それは前作『Welcome To The World』で彼らがやっていたような、フィルターがかった声の加工とか、 そういうチンケな飛び道具ではない。捻れたスウィート・ソウルや奇声の歪んだ配置、 ヘタウマを超えたドス黒いソウルフルさはなんとも変態的で、 それがアーシーなパーティー・ファンクとガッチリ絡み合って……確かにこれは〈前に聴いたことのある音楽〉ではない。 マグーのフロウも、かつての一本調子なものにはとどまらない。

「曲によってはかなり声を変えてるから、俺があまりラップしてないって思われるかもしれないね(笑)。 あと、ティムもラッパ-としてすごく良くなった。ヤツにも直接そう言ったよ(笑)」。

また、故アリーヤを含むファミリーの登場に加えて、ティンバの設立した新レーベル、 ビート・クラブ(安直なネーミング!)から、ババ・スパークスやミス・ジェイド、セバスチャン( ティンバランドの弟)が参加している。それ以外のゲスト人選も独特だ。 別格級のヴァーサタイル性を誇るジェイ・Zはさておき、日本ではバカにされていた早口自慢のトゥイスタ、 掛け声自慢のファット・マン・スクープなど……いわゆる〈正統派〉とされる人はほとんど皆無。 もはや既存の〈豪華なメンツ〉などティンバには不要なのか。

「リュダクリスはヤツがアトランタのラジオ局で働いていたときから知ってて、 ティムは当時からアーティスト契約をしたがってたものさ。 ピーティー・パブロは彼のスタイルを聴いて気に入ってたから頼んだ」。

スタイルの古いラッパーとは組まない、というと冷たいが、 ティンバランドがビートの冒険を続けていく以上、その同行者はどうしても伝統的なフォーマットからはずれた人たちということになる。

「ジョージアやアラバマ、ミシシッピなんかの、深南部に起源するサウンドとそのフィーリング──ビートやラップのスタイル、 スラングなどのカルチャーも含めて〈ダーティー・サウス〉と呼んでる。 ヴァージニアは深南部ではないけれど南部の一部だから、俺たちのルーツの一部は、 ダーティー・サウスにあるんだよ」。

その言葉どおり、いまのティンバランドは南部モードだ。 彼がビート・クラブの第1弾アーティストに選んだババ・スパークスも、 ジョージア州アトランタ周辺をベースに活動してきた新鋭だ。ここで彼にマイクを廻すとしよう。

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掲載: 2002年05月16日 14:00

更新: 2003年03月06日 20:03

ソース: 『bounce』 228号(2001/12/25)

文/出嶌 孝次