インタビュー

Tahiti 80(2)

ストリングス、そして仲間たち

ここで聴くことができるのは、アクション・ペインティングのように鮮烈で自由なサウンド。前作以上のポップイズムのなかでまず目に(耳に)飛び込んでくる色彩は、ストリングスの高らかな響き、胸がすくようなスカイブルーだ。この鮮やかさは一体……!?

「リチャード・ヒューソンがストリングスをアレンジしてくれたんだ。彼のことを初めて知ったのはジェイムス・テイラーのファースト・アルバム『James Taylor』。あのストリングス・アレンジで衝撃を受けたんだ。それ以来ずっといっしょに仕事をしてみたかった」(グザヴィエ:以下同)。

ビートルズやニック・ドレイクなんかとも仕事をしてきた大ベテラン、リチャード・ヒューソン。今回のアレンジ・ワークを「〈チャレンジだ!〉と快く引き受けてくれた」という音楽紳士の優雅にして繊細なストリングス・アレンジは、まさに本作のハイライトのひとつだろう。

「僕らにはアイデアがあっても、それをどうやって実現していいか、なかなかわからないんだ。だからリチャードみたいにプロフェッショナルなアレンジャーと組めたことで本当に勉強になった。デモトラックを彼に渡すと、びっくりするようなアレンジと、時には新しいテーマを付け加えてくれたりもする。そうやってストリングスやホーンでアレンジされた自分たちの曲を聴くたびに、スタジオの中なのに、なんだか感動しちゃったよ」。

憧れのアレンジャーとのコラボレーションに子供のようにあどけなく喜ぶメンバーたち。そこには熱烈な音楽ファンとしての4人の姿があるようで微笑ましいかぎり。そして、そんな彼らのベーシックなサウンド・プロダクションを前作に引き続きサポートするのが、アンディ・チェイス(プロデュース)やエリック・マシューズ(ピアノ、トランペット他)の面々。とりわけアンディについては、プロデュースというよりも、バンドが持ってきた音を共に拡げていく「5人目のメンバーみたいなものさ、スタジオにいる時だけのね」という密接な関係にあるようだ。

「今回は僕らが入念にプリ・プロダクションした音を持ってレコーディングに挑んだんだ。アンディは曲作りには関わっていないけど、それだけに僕らとは違う視点で距離を置いて曲と関わることができたと思う。それでいて親友同士だから和やかにレコーディングできて……、だから前回と何が違うかって言われれば、お互いの経験値とアイデアの豊富さかな。今まで以上に実験を試みることができたよ」。

その〈実験プロジェクト〉に新たに参加したのが、ミキサーのトニー・ラッシュ。エリックの推薦でレコーディングに招かれた彼は、前作以上にエレクトロニクスをフィーチャーしたサウンドをバンドの望みどおりに仕上げていった。

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掲載: 2002年09月26日 12:00

更新: 2003年02月13日 10:58

ソース: 『bounce』 236号(2002/9/25)

文/村尾 泰郎