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インタビュー

The White Stripes(3)

ギターなんてただの木切れさ

 とまあ、こんなふうにさまざまなナンバーで織りなされた新作だが、全体を包んでいる生々しい感触はこれまでのキャリアのなかでも群を抜いてる。たった10日間で録音された(しかも制作費たった80万円!)とは信じられないほどのテンションと底力。なかでもこれまで以上に〈聴かせる〉のが、ジャックのギター・プレイだ。それは時として歌以上にストーリーテラーになる。

「ジャックが弾くギターには個性があるの。ありふれた点はまったくないわ。彼のギターは感情も持っていれば魂も持っている。今回のアルバムにはこれまで以上に彼のギター・ソロが入っていて、聴いていてとても楽しかった」(メグ)。

「〈ギターを弾く〉という当たり前のことを真剣にやりたいだけなんだ。弱音を吐かずに堂々と。いろんなエフェクターを使っていろんな音色を使うんじゃなくってね。ロック・バンドのショウを観に行ってよくガッカリしたもんさ。すごく貧弱なギターで、まるでギターをプレイするのを怖がってるみたいだった。いい加減にしろよ!ってよく思ったよ。ギターなんて俺にとっちゃただの木切れと同じだからね」(ジャック)。

 大阪には岸和田という手荒くも人情厚いヤンキー・タウンがあるが(だんじり祭りと競艇場で有名)、そこでは〈めちゃくちゃにやっつける〉ことを〈びしゃびしゃにいてまう〉と言う。素敵な言葉だ。ジャックのギターもびしゃびしゃに鳴り響いている。そして、そのジャックが「ホワイト・ストライプスがホワイト・ストライプスであるための、いちばん大切な要素」と説明するメグのドラムもびしゃびしゃだ。ここにはウソもギミックもない。その代わりにシーンとは無縁の厳しい美学がある。ジャックは彼が大きな影響を受けたブルースについて、こう説明した。

「ブルースって疑う余地もないくらいにすごく正直な音楽なんだよ。僕の感情の正直な部分に触れるための道具でもあるし、自分の感情表現を可能にする音楽でもあるんだ」(ジャック)。

 そんなブルースを肝に命じたホワイト・ストライプスはロックンロールにためらわない。一直線に、全速力で踏み込んでいく。そう、象は暴走すると手に負えない。かつてインドの象使いたちはいつもナタを持ち、それで象の頭を叩き割って暴走を止めたという。そうまでしないと象は止まらなかったし、それほどの激しさとエナジーがホワイト・ストライプスのサウンドにはあるのだ。

「真のロックンロール・ヒーローっていうのはロバート・ジョンソンやチャック・ベリー、リトル・リチャードみたいに周りから説得されたり人の言うなりにならないで、本当に自分のやりたいことをやれる人だと思う。それが僕にとって真のヒーローだね」(ジャック)。

 ホワイト・ストライプスはその資格を手に入れたんだと思う。この新作で。

▼ホワイト・ストライプスのアルバムを紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年03月27日 17:00

更新: 2003年04月17日 17:01

ソース: 『bounce』 241号(2003/3/25)

文/村尾 泰郎