インタビュー

Lil Wayne(2)

圧倒的な人気の理由とは?

 なぜ、今作がそこまで注目されているのか? 理由は実に単純で、それだけウェインがイケてる存在だからに他ならない。それは旬なアーティストの証明でもあるフィーチャリング・ワークスの多さ(別項参照)も十分に物語っている。「たいていの日はスタジオに入り浸ってるよ。それ以外の日はヴァケーションみたいなモンさ」というウェイン自身の言葉からもわかるように、ここ数年だけを見ても彼は膨大な量の楽曲に参加しているのだが、むろんただ数をこなしているのではない。数々のパンチライン~キラー・フレーズを次々と生み出して、関わった楽曲が次々とストリートを賑わせていくというヒット打率の高さで、客演仕事量はいまなお途絶えることなく増え続けている。本来であれば、自身の作品用にリリックをストックしておいても良さそうなモンだが、そんなことなど気にするでもなく今日もまた、ネット上にウェインの新しいラップがリークされている……。

 そんな凄まじいまでの仕事量×水準によって新たな〈キング・オブ・ヒップホップ〉という地位だけでなく、〈キング・オブ・アーバン・ミュージック〉の称号をも勝ち得たウェイン。つまり彼は、エンタメ業界にありがちなハイプでも業界力学でもプロモーション戦略でもなく、純粋にアーティスト/作品のパワーで注目を集めているのであり、それがアルバム・リリース前にシングル3曲を同時に全米TOP40入り(うち1曲はNo.1を獲ったご存知“Lollipop”!)させるという快挙へと繋がったわけだ。

 また、何よりもウェインの凄いところは、流行り廃りの激しいヒップホップ・シ-ンにおいて、トップ・クラスのポジションをデビュー時からキープしているだけなく、キャリアのピークが(ソロ・)デビュー9年目/アルバム6枚目にして訪れたという、近年では稀に見る大器晩成型だってこと(もちろんピークはまだ上昇途中だけどね!)。それはトレンドの移り変わりにもフットワーク軽く適応できる〈才能〉と、それに順応する〈努力〉の賜物でもあったりする。ウェインに〈努力〉なんて言葉は無縁な気もするが、男ってのはがんばってる姿をアピールするもんじゃないだろ?

「オレは自分の音楽をキープし続ける。だけど、〈スタイル〉は変えてくべきだと思ってるんだ。音楽は変えずに音楽のスタイルをチェンジしていくってことさ。そうあるべきだろ。その〈チェンジ〉っていう意味は、自分の昔のスタイルに戻すっていう場合も含んでる。それも変化の一種だろ。それがオレで、それこそがオレの音楽さ。仕事する時のオレは超マジなんだ」。
▼『Tha Carter III』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

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掲載: 2008年07月17日 23:00

ソース: 『bounce』 300号(2008/6/25)

文/升本 徹