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インタビュー

Lil Jon & The East Side Boyz

数年前からシーンの一隅でガチャガチャ騒いでた連中が、気付けば土足でド真ん中に屹立してやがるよ!! アトランタが生んだ驚異のクランク隊長、リル・ジョンのクランク・ジュースをデカく開いた口で一気に飲み干そうぜ!!

市民権を得たリル・ジョン


「オレたちのファン・ベースも幅広くなってるし、オレもいろんなタイプの奴らとレコードを作ってきたから、リル・ジョン&ジ・イースト・サイド・ボーイズのファンみんなにとって、より身近なものを提供したかったのさ」。

 イースト・サイド・ボーイズを率いてニュー・アルバム『Crunk Juice』をリリースしたリル・ジョンは、そこに参加した豪華な顔ぶれの起用についてそう話す。確かにゲストの顔ぶれはオールスター戦さながらの華やかさに彩られている。このことは、現在までに彼が築き上げてきた実績と信頼がすでに確固たるものであることを証明すると同時に、リル・ジョンがいま、もっとも〈旬〉なアーティストのひとりであることを改めて証明したものだといえるだろう。なにしろアルバムに参加しているゲストたち各々のヒット曲はもちろん、ここ1、2年で莫大なヒット・チューンをプロデュースし、〈クランク・ミュージック〉を世に広めてきたリル・ジョンだ。シーンを代表するプロデューサーとしての彼を知らぬ者のほうが少ないくらいの人気ぶりなのだから。

 だが、ここまでヒット曲を生み出しながらも、グループの正式なオリジナル・アルバムは2002年の『Kings Of Crunk』以来途絶えていた。ゆえに、その名前と強烈なキャラだけが一人歩きした結果、偏ったイメージを先行させているリスナーも多いのではないだろうか?

 突然現われた怪人のように思われるリル・ジョンだが、彼のキャリアは長い。そのスタートはDJだった。その後、アトランタに拠点を構えるジャーメイン・デュプリのレーベル=ソー・ソー・デフでA&Rとして働きはじめ、同レーベルがヒットさせたベース・コンピ・シリーズ〈So So Def Bass All-Stars〉シリーズの制作をきっかけにそのキャリアを積み重ねてきた。確かにお祭り騒ぎのような全力躁状態の雄叫びや合いの手は彼の得意技だし、〈クランク〉はパーティー・ミュージックの系譜に組みこまれるべきものだろうが、注意深く構成なども意識して聴くと、〈クランク〉が飲んで歌って大騒ぎ!の単純な音楽ではなく、長いキャリアに裏打ちされた確かな方法論あってこそのものだということに気付く。

 リル・ジョンが手掛けた曲のラップを聴かずにトラックだけに耳を集中させると、フックの部分でもヴァースの部分でも意外と地味なのだ。これがなぜパーティー・ミュージックとして機能するのかというと、フックでの煽動的なコール&レスポンスや、ヴァースの合間に入る掛け声が肉体運動を促進し、フロアを狂乱に導いていくからで、だからこそリル・ジョンが他のアーティストに提供した曲のほとんどに彼の声が入っているのだ。例えば、クラブDJの多くがフロアを盛り上げるためにマイクを握るが、言ってみればリル・ジョンは、曲中におけるDJとしての役割もみずから果たしているというわけだ。曲の始まりや展開が変わる時などには彼の掛け声が不可欠なものであり、その叫びに先導されて受け手も盛り上がる……という算段なのである。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年01月13日 11:00

更新: 2005年01月20日 18:16

ソース: 『bounce』 261号(2004/12/25)

文/高橋 荒太郎