Lil Jon & The East Side Boyz(3)
とにかく他とは違うサウンド
その“Stop Fuckin Wit Me”はリック・ルービンの手によるもので、「リック・ルービンのトラックはまさに初期のリック・ルービン~ランDMCタイプの曲だよな。リック・ルービンがやってた頃のビースティ・ボーイズって感じかもしれない。曲のコンセプト、それにギターと808が盛り上がるとこなんて超クレイジーだし、やっぱ新しいよな。あんなふうにやれる奴らはもう他にいねえんだよ」とのこと。
ところで、80年代初期~中期のヒップホップ制作ツールとして有名なヴィンテージ・シンセの名器=TR-808。これこそがリル・ジョンが作る〈クランク〉に欠かせないものであり、そのオリジナリティーとクリエイティヴィティーを決定付けた重要なツールである。“Stop Fuckin Wit Me”についても808を使ったうえでの効果を「単純にハードなのさ。808にギターを重ねてみると、荒々しくて煤けた感じのサウンドになるのさ。とにかく他とは違うサウンドになるんだ」といい、これまでもこの機材を使い倒し、さまざまなアーティストに対応できる曲を作り出してきた。
「オレたちがスタジオに入る時は大体、1日に5~10曲分のビートを作っちまうんだ。だから全部の曲が自分に合うビートになるわけじゃない。これはオレの、このビートはリル・スクラッピー、このビートはトリルヴィル、このビートはアッシャーだとかリュダクリスに送る……って感じに分けちまうのさ。誰にでも合う曲なんてあるわけねえし、それぞれのビートにふさわしいアーティスト用にキープしておくって感じだな」。
『Crunk Juice』のクォリティーは非常に高く、計算し尽くされている。あたり構わず騒ぐだけの単純なパーティー音楽ではなく、肉体反応を考えたうえでの計算がなされているのだから、誰もが〈クランク〉に身を任せるのは自然な現象なのだ。この様子だと、世界の中心で〈イエェェェエエェェェ~~イ!!〉と叫ぶリル・ジョンの時代はまだまだ続きそうだ。
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カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2005年01月13日 11:00
更新: 2005年01月20日 18:16
ソース: 『bounce』 261号(2004/12/25)
文/高橋 荒太郎