インタビュー

T-Pain(2)

現状に満足しないでほしい

 「『Thr33 Ringz』のアルバム・タイトルやコンセプトは、このゲームをサーカスに例えたことから生まれたものなんだ。サーカスにさまざまなキャラクターがいるように、音楽業界にもいろんなタイプのアーティストが存在していて、俺はそういったいろいろなアクトを仕切ってるんだ。つまり、俺はサーカスの団長ってわけさ。別に業界批判とかそういう意図があるわけじゃなくて、このゲームってマジでサーカスみたいだなって思うんだよ」。

 ユニークなテーマの楽曲と共に豪華ゲストが目まぐるしく出入りする『Thr33 Ringz』のスリルと賑々しさはまさにサーカスそのものだが、T・ペインはいちばんの見せ物を惜しげもなく最初のシングルに用意してきた。デュエット・アルバム、その名も『T-Wayne』の制作が噂されるリル・ウェインとのコラボレーション“Can't Believe It”。夕暮れの遊園地のメリーゴーランドのようにロマンティックで儚くて、どこか不思議な寂寥感のある、最高に素敵なスロウ・ナンバーだ。

「“Can't Believe It”を最初のシングルに選んだのは、アルバムのなかでもっともシンプルな曲だったから。新しい表現方法を採ってみたかったんだ。わかりやすくて口ずさみやすくて、メロウなヴァイブがあるからね。他のアーティストが通常選ぶような曲とは違うもの、従来のクランク調のシングルとは違った楽曲を選んでみたかったんだ。この曲には、〈いつもやっていることに固執しないでほしい〉〈現状に満足することなく努力して高いところにある目標を実現してほしい〉というメッセージを込めているんだ」。

 その“Can't Believe It”に続いて、アルバムからはすでに2枚のシングルが切られている。ひとつは、チョップド&スクリュードに着想を得た傑作としてシアラ“Oh”と共に語り継がれていくことになるであろうリュダクリスとのジョイント“Chopped N Screwed”。もうひとつは、三たびクリス・ブラウンと組んだ疾走感溢れるクール・ファンク“Freeze”。これらリード・トラックで発揮されているクリエイティヴィティーの高さから、『Thr33 Ringz』のクォリティーはおのずとイメージできると思う。

「“Chopped N Screwed”は、サウンド面ではDJスクリューのスタイルをフィーチャーしているけど、リリック的にはディスされた結果、勝手にチョップ(切られる)されたりスクリュー(台なしにされる)されたり、という状況を表現したラヴソングだね。“Freeze”は、前に俺とクリス・ブラウンとオマリオンとで話していた内容をベースにしたものなんだ。ふたりみたいに歌だけじゃなくてダンスも上手いとなるとますます女の子たちにモテるんだろうなって。俺は彼らとダンスで競うことなんて一生できないけど、それについて歌うことはできるからね(笑)」。
▼T・ペインのアルバム。

▼『Thr33 Ringz』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

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掲載: 2008年11月27日 22:00

ソース: 『bounce』 305号(2008/11/25)

文/高橋 芳朗