インタビュー

オートチューンだけじゃない!

 オートチューンのヴォーカル・エフェクト≒ロボ声使いばかりで語られてしまいがちだが、T・ペインが優れたシンガーであり、ソングライター、トラックメイカー/プロデューサーであることも忘れてはならない。多様なスタイルを貪欲なまでに吸収/咀嚼するそのサウンドは、多ジャンルのスタイルやトレンドが混在するフロリダ出身らしい。実際に“Buy U R Drank(Shawty Snappin')”などは同地の流行を集大成したような大ヒット曲だったし、2ライヴ・クルー以来の伝統的なマイアミ・ベースを筆頭にバウンス~クランク~スナップなどを基調にしながら、さらりとダンスホール・レゲエも披露するなど、ビート制作の振り幅は相当広い。はたまた新作『Thr33 Ringz』では故DJスクリューの編み出したチョップド・アンド・スクリュー・マナーの曲もあったり、その何でもアリ感はリル・ジョンにも通じるものだ。

 一方で、彼の作品から共通して感じられるのが、メロディーメイカーとしての非凡なセンスである。“I'm Sprung”“Bartender”といった代表曲からもわかるように、フックのみならずメロディー作りに関する彼の才はシーン随一だと言えるし、その意味では新作中の“Change”がエリック・クラプトン“Change The World”のリメイクだというのも納得できる流れなのだ。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年11月27日 22:00

ソース: 『bounce』 305号(2008/11/25)

文/升本 徹