インタビュー

T-Pain(3)

みんな俺のカラオケみたいだろ?

 その他では、メアリーJ・ブライジやP・ディディらと共にエリック・クラプトン“Change The World”のリメイクに挑んだ“Change”も話題になりそうだし、T.I.、カニエ・ウェスト、シアラ、エイコン、ラヒーム・デヴォーン、ミュージック・ソウルチャイルドらとの共演もあるが、そんななかであえてピックアップしておきたいのが、DJキャレドをフィーチャーした問題作“Karaoke”だ。ここでT・ペインはみずからが立役者となった昨今のオートチューン・センセーションに言及。安直なフォロワーたちに向けて激しく怒りを爆発させている。

「“Karaoke”では俺に対するリスペクトを要求してる。最近はみんながオートチューンを使いはじめて、まるで俺の曲のカラオケをやってるみたいになってるだろ? 自分がオートチューン・サウンドをクリエイトしたみたいな顔をしてる奴、自分がこのゲームに新しいサウンドを提供したみたいに振る舞ってる奴が大勢いるんだ」。

 このあと、T・ペインは「俺はオートチューン・サウンドを復活させたいと思っただけで、決してオリジネイターというわけではないよ」と付け加えてくれたが、実は“Karaoke”にも〈Bitch, I'm Teddy Pain, the son of Teddy Riley〉という実に興味深いラインがあったりする。音楽的才能はもちろんだけれど、こうした謙虚な態度も彼をトップへと導いた要因のひとつなのかもしれない。

「この1年間は凄く有意義な時間だった。いままで努力し続けてきて、ようやく成果を出すことができたって感じてる。それと同時に、いまのこの勢いを維持していくためにさらに努力していきたいと思ってるんだ。今後もファンのため、そして将来のキャリアのためにやりたいことがたくさんあるからね。とにかく、このままがんばっていきたいと思ってるよ」。

 T・ペインは先述の“Karaoke”で、「I'm a hit maker, not a comedian」とも言っている。もう誰も、彼をイロモノ視したり一発屋扱いしたりはしないよね。幕はまだ開いたばかり、サーカスがおもしろくなってくるのはこれからだ。
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掲載: 2008年11月27日 22:00

ソース: 『bounce』 305号(2008/11/25)

文/高橋 芳朗