インタビュー

SEAN PAUL(2)

レゲエを正しくレプリゼントしたい

 前評判通り、本作ではスティーヴン・マクレガーを大々的に抜擢。19歳にしてダンスホール・シーンのトップを突っ走っているのは、すでにレゲエ・ファンには広く知られている。

 「初めて会ったのは、彼がまだ8歳の時だ。すごい恥ずかしがり屋でね。それが16歳で学業をやり遂げ、ドラムを学んでお父さんのスタジオでミュージシャンとして活動を始めたんだ。彼とたくさん曲を作ったのは、現在のジャマイカのサウンドをきちんと反映させたかったから。スティーヴンはどんどん進化していて、確かにジャマイカ産のダンスホールなんだけど、フューチャリスティックな新しい要素も入ってる。俺の音楽と方向性が同じだし、ふたりとも1月生まれだから気が合うんだ」。

 シングル“So Fine”を聴いても、相性の良さは伝わってくる。もうひとり、ショーンの長年の右腕である弟のジェイソンが作った“Pepperpot”もいままでにない肌触りの曲。

 「俺がいままで歌ったなかでいちばんポップな曲だ。リスクがあったのは確かだけど、カントリーの要素も入っていて、ジャマイカの人にも好まれるタイプの曲だと思う。〈ペッパーポット〉は身体に良いものがたくさん入ったジャマイカのスープ。家族を含めたみんなに反対されている状況の歌だね」。

 4作目にしていわゆるママ・チューン(母親讃歌)、“Straight From The Heart”も作った。

 「いまはキツい思いをしている人が多いから、〈みんな苦労して大変だ〉みたいな曲は作りたくなかった。聴いていて気分が良くなりつつ、みんなの気持ちに届くメッセージを持つ曲をめざしたんだ。あの曲は母さん宛にバースデー・カードを書いていたら、一枚のカードには書き切れないほど言いたいことがあるのに気付いて……。俺はずっと世界に自分を証明しようとがんばってきたわけだけど、その基盤を作ってくれたのは彼女だから」。

 すでに〈ショーン・ポール流のダンスホール〉を確立した感も。それが、〈レゲエのいちジャンルになっているのでは〉と訊ねたら、照れ笑いをしてからこう答えた。

 「俺はダンスホールの曲が多いけれど、あくまで自分はレゲエ・アーティストだと思っている。レゲエにもいろんなタイプがあって、ダンスホールは新しいテクノロジーを採り入れたモダンなレゲエなんだ。自分自身がそのカルチャーの一翼を担っているのは嬉しく思うし、ワンドロップの曲を必ず入れるのはレゲエを正しくレプリゼントしたいからなんだ」。

 当人が何と言おうと、世界規模でレゲエのトップに立っているのはショーンだ。その帝王学と流儀が詰まった『Imperial Blaze』、ぜひチェックされたし。   

▼ショーン・ポールのアルバムを紹介。

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掲載: 2009年08月26日 18:00

ソース: 『bounce』 313号(2009/8/25)

文/池城 美菜子